蕎麦屋でたまに見かける10割蕎麦って何?
美味しいの?
こんな疑問にお答えします。
結論は蕎麦粉100%で打ったお蕎麦の事です。
現役調理師で蕎麦鑑定士1級取得者。
そんな私が解説します。
10割蕎麦って何?
10割蕎麦は蕎麦粉100%で作ったお蕎麦の事です。
別名では「生粉打ち蕎麦」とも呼ばれています。
二八蕎麦などで使われるつなぎに「小麦粉」が使われていないお蕎麦の事です。
蕎麦粉100%のためお蕎麦の香りや風味・食感などが楽しめるのが特徴です。
元々は小麦粉を使う風習は無く、お蕎麦のみで打っていたのが普通でした。
小麦粉やつなぎの登場から10割蕎麦以外の物が出来て来ました。
お蕎麦の種類についてはこちら
10割蕎麦にも種類がある
ひとえに10割蕎麦と言っても様々なお蕎麦があります。
蕎麦粉の挽き方や打ち方で変わります。
良く間違ってしまうのが10割蕎麦=太くザラザラしてボソボソする田舎蕎麦だと思われることです。
未だに食べにくいイメージがあるのが10割蕎麦なんですが、食べやすい10割蕎麦も存在することを知っておきましょう。
田舎蕎麦と呼ばれるような太くザラっとして黒いお蕎麦ももちろんありますが、細めで透き通るような繊細なお蕎麦など「打ち手の考え方」でどのような10割蕎麦になるのかが変わっていきます。
香り・味・食感とひとえに10割と言っても変わってくる物です。
十割蕎麦の香り
10割蕎麦の特徴の1つとして「香り」があります。
つなぎが含まれず蕎麦粉のみで作られている為に香りが出やすいのが特徴です。
二八蕎麦などとは違い蕎麦粉が100%含まれているだけに、お蕎麦の香りも強くなります。
しかしお蕎麦の香りは非常に繊細な物です。
打ち手が狙いを定めて打ってみても思うとおりにならないことの方が多いです。
例えば更科系の粉を使えばお蕎麦の香りはより繊細で出にくくなりますし、外殻まで使えば出やすくなります。
そんな両者ですら香りを引き出すには難題あります。
そもそもお蕎麦の香りを引き出すには「蕎麦の実」をどう取り扱うのか?で変わっていきます。
- 生産者が手間暇かけ一生懸命育てること。
- 脱穀して丁寧に磨きをかけ搬送します。
- 蕎麦屋や製粉会社に届き、製粉されます。
- その後にお蕎麦を打つ事になります。
つまり各所での取り扱い次第でも香りは変化する物なんです。
生産者の努力がいかに大変な事か理解できると思います。
10割蕎麦の味
味を考えてみましょう。
10割蕎麦の味を決めるのはどこの部位を使うのかで変わります。
蕎麦の実にある中心部でデンプン質が高い所を使えば甘味のあるお蕎麦に。
逆に外の黒い殻まで挽きこんで使えば複雑な味に変わり、場合によってはえぐみなどの癖の強いお蕎麦にもなります。
製粉技術や篩い分けなどによって使い分けする事で味に違いが出るもの。
つまり打ち手がどの部分を挽きこんでお蕎麦を作るのかで味は変化します。
製粉技術も熟知していないと、狙った味にたどり着く事はなかなか出来ないのが10割蕎麦。
繊細で複雑なのがお蕎麦の味なんです。
10割蕎麦の食感
10割蕎麦の食感はつなぎの小麦粉を入れたお蕎麦とは違います。
フッツリ切れやすいのが10割蕎麦の特徴です。
小麦粉が入ると粘りからツルツル・シコシコしているイメージですが、10割蕎麦には表面は少しお蕎麦の粒子でザラつき噛みしめるとぷつりと切れる食感になります。
製粉技術次第で細かく微粉にする事で繋がりやすい10割蕎麦が出来る事は確かですが、それでもフッツリ切れやすいのが10割の食感です。
食感に関係するコシはどうでしょうか?
昔ながらにイメージされる10割蕎麦は太くて固く・ボソボソしていると思われるかもしれません。
コシは弾力やなめらかさも備えた物で、ただ単に固いだけではありません。
ボキボキではなく、なめらかさも保ちながら麺としての食味もあるのがコシがあるものです。
元々繋がる力が弱い10割蕎麦のコシを引き出すには繊細で難易度の高い技術です。
10割蕎麦のデメリット
反対に10割蕎麦のデメリットをみていきます。
10割蕎麦の欠点は状態を保つことが難しいと言うことです。
つなぎの無い10割蕎麦は切れやすいので取り扱いもシビア。
時間の経過と共に切れやすくなるのが特徴です。
茹でて提供されたお蕎麦も二八蕎麦などよりのびやすい傾向にあり、のびて水が切れてしまうとボソボソした食感が強くなり食べにくくなります。
温かい蕎麦にする事も不向きです。
お蕎麦は熱に弱い性質があり、冷たいお蕎麦以上にのびが早くなります。
味も香りも繊細なのでかけ汁に浸した10割蕎麦はお汁が勝ってしまうことにも注意が必要です。
理解した上で食べないと、温かい10割蕎麦は「なんだか美味しくない」と固定概念がつくかもしれません。
デメリットもふまえた上でも10割蕎麦は生粋で魅力的な物。
楽しみ方を覚えて食べてみると良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
蕎麦屋さんにある10割蕎麦の魅力が伝わりましたか?
10割蕎麦だけに限らず、様々なお蕎麦を体験し食べ歩きしてみると良いかもしれません。
お読み頂きありがとうございました。
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